乗鞍岳 北アルプス

高山植物と稜線歩きの下山ルート 乗鞍岳 平湯・乗鞍新登山道

2017-11-12


平湯・乗鞍新登山道は11.6kmのロングコース。
夏はコマクサが咲き誇り、焼岳越しに笠ヶ岳から槍ヶ岳を一望できる景観美しいルートです。
地元有志に加え、クラウドファンディングを用いて整備が話題となりました。

概要

岐阜県高山市と長野県松本市にまたがるの剣ヶ峰(3,026m)を主峰とする山々、「乗鞍岳」
南北に多数の峰が連なるので「乗鞍連峰」とも呼ばれる。
岐阜県・長野県共に畳平まで自動車道が通じており、「日本で最も登りやすい3,000m超級の山」とも称されている。

(「平湯・乗鞍新登山道マップ-畳平バスターミナル」より)

畳平から大黒岳、富士見岳を経て剣ヶ峰に至り、お花畑を一周して畳平。
乗鞍新登山道整備2017 で整備されたばかりの乗鞍岳と平湯温泉を結ぶ新登山道を歩いてきました。
この記事は後半の畳平から平湯へ下山をレポートします。

畳平から剣ヶ峰、お花畑については前編をご覧ください。

日程 2017年8月12日
ルート 畳平 ⇒ 大黒岳 ⇒ 富士見岳 ⇒ 剣ヶ峰 ⇒ お花畑 ⇒ 畳平 ⇒ 姫ヶ原 ⇒ 硫黄岳 ⇒ 乗鞍権現 ⇒ 平湯温泉スキー場
グレーディング 畳平 ⇒ 乗鞍岳 体力度 2/10 難易度 B/E
平湯温泉 ⇒ 乗鞍岳 体力度 7/10 難易度 C/E
アクセス Googleマップで「ほおのき平駐車場 」を確認する
周辺情報 アルピコ交通 シャトルバス(ほおのき平⇔畳平) 片道:1,270円 往復:2,300円
濃飛バス 平湯・新穂高線(大滝口・キャンプ場前⇒ほおのき平) 550円

トレッキングレポート


(10:00)
畳平バスターミナルで補給し、お目当ての乗鞍・平湯新登山道へ向かいます。
下りながら11.6km、所要時間5時間のロングコースです。


(10:05)
乗鞍・平湯新登山道へはしばらく乗鞍スカイライン歩き。
林道歩きと比べれば快適だけど、ガスに包まれ展望はありません。

展望のなさを残念に思っていると多くの花々が歓迎してくれました。
鈴なりの可愛い花を咲かせていたのはコメバツガザクラ。
華やかさはないけれど、奥床しく美しいコウメバチソウ。
咲き乱れるイワギキョウ。


(10:20)
御来光を仰ぐために登った大黒岳の登山口。
こちらは奥に抜けた側の登山口です。


蕾をギュギュっと絞って開花を待つヤマハハコ。
中央アルプスの木曽駒ヶ岳、南アルプスの鳳凰山でも元気をくれました。


ちょっと遠いけど、雷鳥発見!?
もっと近くで見たかったけど、5分ほど待って諦めました。
次こそはもっと近くで見れると良いな。


雲の門が開かれ、青空が顔を出しました。
天気は受け入れるしかないけれど、青空への願いは止められません。


(10:35)
お花畑と雷鳥に足を止めながら30分。
乗鞍スカイラインを離れ、平湯・十石山登山口から登山道へ入ります。


新登山道と聞いてきたけれど、色褪せた案内図からは時間を感じます。
少し調べてみると10年ほど前は通行禁止とされていたようですね。
地元有志とクラウドファンディングの力で少しずつ整備が進んでいます。


初めこそ草の高さに驚かされたものの、5分も進めば気持ちの良い登山道が始まります。


ハイマツ帯に描く登山道の曲線はどうしてこんなに美しいんだろう?
テンションが上がって駆け下りたくなるけど、駆け下りてはもったいないとうずうず・・・


この周辺は姫ヶ原と呼ばれる湿原で青々とした苔達が目を楽しませてくれます。
このふかふかの苔をベッドに眠ったら良く眠れるかな?


P2515を巻くと登山道はハイマツの境界へと続いていました。
ハイマツの足元からミヤマアキノキリンソウが励ましてくれます。


振り返るとあんなに小さかったP2515が存在感を増していました。
ガスで距離感が失われると、自然の偉大さがひときわ目立ちます。


(11:00)
久しぶりに現れた案内板に一安心。「平湯まで8.6km」
ここを過ぎると緩やかながら登り返しが始まります。


葉上に浮かぶ雨露が心を和ませてくれました。
山でしか見れないわけでもないのに不思議な感じ。


瑞々しく咲くコマクサの双子。
畳平周辺のコマクサは色褪せていたので美しい女王と会えて良かった!


突然現れた岩の祭壇。岩場登りはなく、軽く駆け抜けました。
視界をガスで狭められるとこのわずかな変化が心を軽くしてくれます。


平湯・乗鞍新登山道のハイライト、硫黄岳。
青空が広がって来てテンション急上昇!
でも、硫黄岳で全行程の1/3に過ぎないんです・・・


振り返ると先ほど巻いたP1525と四ツ岳。
中央には姫ヶ原・・・登りなら乗鞍スカイラインを目にして発奮するところかな?


(11:20)
硫黄岳山頂を巻くように続く登山道。
先を急ぐあまり、山頂を確認せず通り過ぎたのは失敗でした。


硫黄岳を過ぎると少しだけアップダウンが連続します。
銚子ヶ峰を思えば可愛すぎる小ピーク!


岩の隙間からミヤマイワニガナが花開いていました。
藤原岳の福寿草もそうだけど、岩に咲く花は元気をくれます。


登山道は笹原へと入り込みました。
青空は再び姿を消して濃いガスが辺りを包み始めます。
剣ヶ峰に硫黄岳、一番良いところで青空が見えたのは幸運でした。


ガスガスの山中での立ち枯れは大台ヶ原や恵那山を思い出します。
大台ヶ原の大杉谷ルート、来年こそは登りに行きたい!


象の鼻のような雄しべをもつミヤマホツツジ。
この曲線にはどこかメルヘンを感じてしまいます。


いくつかの小ピークを乗り越えてハイマツと笹の境界。
ここから乗鞍権現社まで緩やかな登り返しが始まります。


土砂崩れの痕跡が残るところもありました。
ロープや土砂流出防止柵をここまで持ってくるだけでどんなに大変か・・・
整備を行われる方々へは感謝しかありません。

乗鞍権現社に近付くと多くの花々が歓迎してくれました。
ミヤマアキノキリンソウ、不思議と食欲が湧くクルマユリ。
黄色いユリはニッコウキスゲとハクサンボウフウ。


花が多いのは大歓迎だけど、負けじとシダが登山道を浸食。
乗鞍権現社までは濃い草藪が少しだけ続きます。


目印になりそうな岩がありました。
藪は知らず知らずのうちに登山道を外すのでペンキに一安心。


足元を確認できず、踏み出して初めて分かる登山道。
経験があるから踏み出せるけど、慣れていない人は怖いだろうなぁ・・・


(12:20-35)
およそ中間地点にある乗鞍権現社へ辿り着きました。
ここで初めて登山者とすれ違い・・・わずかな交流に元気がもらえました。
少し広くなっていたので腰を下ろして昼食タイム。

乗鞍権現社の脇に咲いていたのはダイモンジソウ。
足元の低いところにはゴゼンタチバナが咲いています。


高度が下がり、木が高さを増して見慣れた登山道になりました。
でも、乗鞍権現社から平湯まではおよそ2時間半・・・駆け下りるのみ!


さほど急ではないところですが、土留めの板で階段が作られていました。
乗鞍新登山道整備2017でも階段が整備されていたはず・・・そろそろ出て来るかな?


低山でも見られるギンリョウソウ。
実はゴキブリと共生関係にあり、果肉を提供する代わりに種を運んでもらいます。


先日整備されたばかりの階段が出て来ました!
この階段に名を刻むためには35,000円と整備参加が必要です。
山を愛するものとしてこの試みに賛同します。参加もしたいです!


(13:05)
地図にもあった水場分岐。時間も30分でぴったりです。
水場までは55mと平地なら10秒・・・立ち寄りましょう。


(13:08)
水場にはパイプもなく、沢からの給水。
こういう水場はちょっと抵抗があって手で触れるに留めました。


横たわるように咲くリンドウ。
正確な名前は分かりませんでした・・・


山岳保険で知られるやまきふ共済会の階段がありました。
ブログ収益は装備や旅費に充てているけど、山に還元って選択があっても良いよね。


スパっと切れ落ちた斜面上を行くところもあります。
晴れていれば焼岳、穂高連邦が見えます。晴れていれば・・・


(13:45)
平湯尾根の中間地点である白猿ヶ池分岐。
白猿ヶ池へはわずか22m・・・もちろん立ち寄りましょう!


(13:46)
池と言うよりも沼に近い白猿ヶ池。
アメンボがスイスイと水面を滑っていました。


美しいブナ林が疲れた足に元気をくれました。
展望もなく黙々と下るときこそ自然に目を向けて行かないと!


(14:05)
いつもは掲載しない三角点。
三等三角点「中根山」を過ぎれば、平湯スキー場は近い。


ちょっぴり困った赤ペンキの矢印。
登山道は通りにそのまま直進が正解です。


(14:10)
平湯温泉スキー場の最深部に辿り着きました。
「長かった!やっと終わった!お疲れさま!」
実はここから辛く長いゲレンデ下りの始まりなんです・・・


久しぶりに出逢ったセンジュガンピ。
華やかな花がゴールを祝福してくれているようでした。


(14:15)
ここからは駆け下りるにはきつい傾斜が続くゲレンデ下り。
最後の最後で足に止めを打つかのように酷使されます。


ほおのき平へのバス停があるあんき屋が見えます。
すぐそばの平湯大滝には足湯があり、疲れた足を癒すにはぴったり!


ゲレンデでは羊が放し飼いにされていました。
突進に気を付けながら近付くチキンレースはこれが限界・・・


「どこかに歩きやすい登山道があるんじゃ?」
そんな疑問は案内板が打ち砕いてくれました。


(15:00)
ゲレンデを下り切って、こちらの扉を抜ければ下山完了です!
時間にして1時間弱ですが、本当につらかった・・・お疲れさま。


(15:05)
あんき屋前のバス停からほおのき平へ戻りました。
1時間は短縮できると思いきやコースタイム通り・・・甘くなかった!

平湯・乗鞍新登山道は11.6kmのロングコース。
夏はコマクサが咲き誇り、焼岳越しに笠ヶ岳から槍ヶ岳を一望できる景観美しいルートです。
地元有志に加え、クラウドファンディングを用いて整備が話題となりました。

実際に歩いて思ったのはやはりバリエーションルートである。
整備の手は入っているものの、案内板の数は少なく、藪の濃いところがありました。
距離も長くエスケープルートがないので初心者向けではありません。

しかしながら、御来光登山で時間を残した登山者の選択肢にはなりえます。
「乗鞍岳は物足りない」そう思われている方はこのルートを歩いてみましょう。
その物足りなさを埋め、素晴らしい達成感を味あわせてくれます!

最後まで読んでくださってありがとうございます!

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